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 水素の安定同位体である重水素(D)で標識された化合物は、NMRや質量分析で容易に検出できるため、有機反応機構や生体内代謝経路の解明など様々な研究分野で利用されています。最近では、炭素(C)-D結合がC-H結合よりも強固である事に着目して、医薬品の代謝部位近傍を重水素化して代謝を遅延させた重水素標識医薬品の開発も注目されています。したがって、重水素標識化合物の効率的大量合成法の開発はますます重要になっています。
 本研究では「フロー式反応(1)」を利用した重水素標識化合物の連続合成法を開発しました。
 フロー式反応は、反応液を狭小な流路に送液して、触媒充填カートリッジ内で触媒と効率良く接触させて目的化合物を連続合成する方法論であり、温度や反応時間などのパラメータの制御が容易なため、消費エネルギーや廃棄物の削減を可能とします。

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 2-プロパノール(2-PrOH)と重水(D2O)の混合溶媒に芳香属化合物を溶解して、プラチナ(Pt)/カーボンビーズ(CB)を充填した触媒カートリッジに送液すると、カートリッジ内で2-PrOHの脱水素反応とH-D交換反応が同時に進行し、効率良く重水素標識化合物を合成することができます。この方法により、解熱鎮痛薬であるイブプロフェンなど様々な機能性物質をフロー重水素化できるだけでなく、反応液を長時間送液しても触媒が失活することなく連続使用できるため、時間軸の延長により重水素標識化合物の大量合成法としての実用化が期待されます。

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本研究成果のポイント

  • 重水を重水素源として連続フロー式H-D交換反応を達成したのは初である。
  • 触媒カートリッジも長時間連続で使用しても失活しないため、重水素標識化合物合成法として実用化が期待できる。

論文情報

  • 雑誌名:Bulletin of the Chemical Society of Japan
  • 論文名

    Efficient Continuous-Flow H-D Exchange Reaction of Aromatic Nuclei in D2O/2-PrOH Mixed Solvent in Catalyst Cartridge Packed with Platinum on Carbon Beads

  • 著者:Kwihwan Park, Naoya Ito, Tsuyoshi Yamada, Hironao Sajiki
  • DOI番号:org/10.1246/bcsj.20200325

研究室HP

https://www.gifu-pu.ac.jp/lab/yakuhin/